教えてQ&A(初級編)


Q.そもそもガラスエッチングってナニ?
Ans.ネットなどで「エッチング」と言うキーワードで検索をしてみますと、もっと広い意味で使われている事が分かると思います。 ここでは、ガラス素材や金属などの素材を彫刻するという話になりますので、こちらのガラス・エッチングとしてお応えする事にします。
 一般的にガラス彫刻と申しますと、サンドブラストによるものとケミカルによる方法になるかと思います。 文字通り、どの方法で素材を彫るかと言うものですが、そのいずれでも基本的には、彫る場所と彫らないエリアをマスキングと言いまして素材を保護する事によって、彫れる場所とそうでない場所が出来ると言う事になります。
 サンドブラストと言うのは、高圧を掛けたエアーで研磨剤(これをメディアと言う場合もある)を素材に吹き掛ける事によって彫れ、もう一方のケミカルと言うのは溶剤で素材を溶かすという方法の違いです。
 今回、アートブラストと言うお話が前提なのですが、産業界で「サンドブラスト」と言いますともっと広い意味で、たとえば金属のサビ落としであるとか塗装面を剥がす(取る)と言うことでも使われています。 同様にボートの船底に付着したフジツボなどの貝を剥がすなどで使われる事もあって、それらをサンドブラストをするという場合もあります。
 アートの場合は、マスキングをして保護する部分もありますので、しない面には、当然の様に、その上からカラー塗料をスプレーすれば、保護されていない(たとえば切り抜き文字や切り絵等が)素材表面に色が付着して、それを剥がすと文字になっている、これはすぐにご理解戴けるのではないでしょうか? 塗料などが付着しない様にする為に市販で売られているマスキングテープと言うものがある事もご承知の事ではないかと思います。


 他に彫る方法としましては、このマスクを必要としないレーザー彫刻と言う方法もございますが、これは、広がらない性質のレーザー光線をコンピュータで制御するので、このマスキングが必要ないのです。


Q.マスクとかマスキングに就いて、もう少し詳しく教えて下さい。
Ans.マスクを作る作業と言うのは、基本的には素材を保護をして・・・と言うのはご理解戴けたと思わけますが、たとえば、ゴシック体などの文字はまだ良いとしまして、シートに毛筆やイラストなど複雑な切り抜きにはそう容易くは出来ませんね。 ゴシック系の文字でサイズも大きく、また一文字だけと言う事でしたら、原稿を置いて定規などで線を引き、そのラインの上をカッターナイフなとで切り抜く、これはそう難しくはないと思います。 また、素材も平面ばかりではなく、曲面の素材もあります。
 一般的に、マスクシートをカットするには、二通りの方法がございます。 一つは、こまめにカッターで切り抜く(手でやる)方法とマシンによるカットがございます。 マシンによる方法では、レーザーでカットする方法もあるでしょうし、シートをカッティングするトマシンと言うものもございます。 マシンを使うものは、何れもコンピュータで制御するものですので、図案どおりにカッターが動きますので、複雑な図案でも正確にシートをカットしてくれます。 色々な色のシール(シート)ですので、切り文字を貼り付ければ、そのまま貼り付ける事も出来ますね。 この場合、使うシートは耐久性もありますので、サンドブラストでも、カラースプレーでも、どちらも使えるでしょう。
ただ、図案によりましては、0.1mmのドットや細かい図案もありますので、あるいは毛筆など独特の細かいかすれ等は、カッティングマシンでも限界もあります。 そこで使われるのは、レーザー彫刻や専用のブラスト用のシートというのものがあります。 光(紫外線)で原稿を写しまして、光の通る部分と通過しない事で、光に反応します樹脂シートですので、それを再現する事が出来るのです。 つまり、光が当たると硬化し、当たらないところは現像剤(又は水)で解けて抜けるということになるのです。(感光シートによっては逆の場合もある) この樹脂シートは、最近では高感度のものがありますので、細線や写真(ドットで表現した原稿)でも再現できる様になっています。 実際には、何ミクロンと言うシートの厚みで使い分けるのですが、サンドブラスト時の耐久性も考えて選択します。 この感光シートは、産業用に国内で作っているものも海外のものございます。 それぞれメーカーによって、一長一短はございますが、それを使い分けると言うのも技術で、お手持ちの露光機で使い慣れたものを使うと良いと思います。 但し、これらの露光用の樹脂シートは温度変化にも左右されますので、長期保管が出来ないものもあります。 
 最近では、必要な箇所を溶かす為の現像剤を使うものと使わないもの、また現像剤の変わりに水でOKというものもあって、浸けるタイプや水圧で洗浄して溶かすものなど製造メーカーによって色々なタイプがとあります。
 これには、プロの勘みたいな、技術と経験によるところもある様です。 最近は、それらが全自動で出来る優れもの(露光から洗浄・乾燥までを機械がやってくれる)もありますので、初心者でも簡単に出来ると言うものもございます。
 いずれにしましても、版下原稿の良しあしで、作品が良いものになるかそうでないものになると言うのはございます。 プラス、加工技術が、と言う事になるのでしょうか。 一方、レーザー彫刻の場合は、すべてそれはシステム版と言うことで、コンピュータによってコントロールしますので、こうした一連の作業はしなくてもよいというメリットはございます。 

Q. 研磨剤でどんな素材iにでも彫刻はできるの?
Ans. あの固いコンクリートでさえ、長年の水流で彫れるというのは見た事があるのではないでしょうか? もちろんコンクリートが置かれた環境やそれ自体の劣化と言うこともあるでしょう。
 市販で販売されているダイヤモンドカッターやヤスリはご存知だと思われますが、同じ硬度の素材同士てあればキズが付くというのは経験上知っているところです。
 サンドブラストの研磨剤の中にも、その使用用途に合わせて色々なタイプのものがございます。 また、研磨剤と一言で申しましても、その粒子が細かいものからやや大きなものまで、色々と種類があります。 それらも、サンドペーパーと同じで番号が決められていています。
 また、外で使うものには、研磨剤をリサイクルをしないと言うものが使われる事もございますが、一般的に屋内で作業をするものはキャビネット内で研磨剤を循環させて使いますので、やや高価になりますが、研磨剤の耐久性のあるものもあります。 一般的それから比べますとやや高価になりますが、キズ落としてや磨き用の研磨剤もございます。
 基本的には、加工素材によって研磨剤も選択しますが、同じ場所を時間を掛けて吹く付けすればより深く彫れる事になります。
 ただその一方で、アートブラストの場合は、小さい文字や細かいイラストなどを彫る事もありますので、その為の樹脂のシート(フィルムと考えて下さい)にそれを再現しますので、このシートの耐久性と言う事もございます。 長い時間にも耐えられるシートにする為には、シートの厚みがあった方が、より耐久力もある事になります。 その一方で、シートに細かい線や写真製版の様なドットを早く出す(樹脂を溶かす)為には、薄い樹脂のシートの方が適している事になります。 
 ですので、高圧で長い時間研磨剤をかけなければならない様な素材、たとえば金属などの固い素材の場合で、やや深く彫るという場合は、耐久力のある樹脂シートを使う必要があります。 長い時間高圧にさらされるのですから、金属が変形してしまうなどの問題点もございます。 その点、ケミカルエッチングの場合、金属等を溶解剤で溶かしますのでそういう事はありません。
 現在、サンドフラスト用のマスクとなる樹脂シートも色々なタイプのものが出ていますので、選択をするという事も出来ますし、基本的には細かい文字などは深く彫りますと、文字などが潰れて感じになってしまいますので、あまり深く彫るということはございません。
 そういう意味でも、素材表面を削って、文字などとして認識できる程度のものであれば、ほぼどの様な素材でも加工は出来ると考えてよいと思います。 もちろん、樹脂シートの様に、弾力性のある素材には、研磨剤が跳ね飛ばされますので彫れないと言う事はあります。

 サンドブラストの場合は、手作業になりますので、目視によって比較的容易に彫刻の深さの調整が出来ると言うメリットがございます。
 レーザー彫刻の場合もそうですが、パワーの問題もございますが、深彫りにそれ相当の時間を掛けると言う事はございます。 同じものを同じ様に作るには、コンピュータで制御するのが一番ベストです。
 いずれの場合でも、一長一短はあるのですが、それをカバーするのが技術と言うことになるのではないでしょうか?



 サンドブラストの良い点をもう一つ挙げるとしますと、人の目視で確認しながら自由に深さの調整(素材に研磨剤を当てる強弱と時間)が出来ますので、たとえば何層にも色硝子を重ねた被せ硝子を彫刻するなどの場合は、ぼかしを入れたり色の混合を出したり、それは芸術的な表現や手作り感なども表現出来る・・・と言う点がございます。 素材の被せガラスも手作りで、その彫刻も作者のセンスによって作り出されるものですから、同じものは一つも無い『手づくり工芸品』と言っても決して言い過ぎではないと思います。

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